徳島県の藍染は、吉野川流域の風土の中で発展していきました。
吉野川は日本三大暴れ川の一つで、他の坂東太郎や筑紫次郎と並んで「四国三郎」と呼ばれます。洪水が起こるたびに肥沃な土がもたらされ、藍の栽培に適していたことから、その一大産地となりました。
阿波国徳島藩の初代藩主・蜂須賀至鎮(はちすか よししげ)の奨励によって、江戸時代には藍の生産が隆盛を極めました。その品質のよさから阿波藍は『正藍』、ほかの地の藍は『地藍』と呼んで区別され、全国各地で珍重されてきました。徳島には当時の藍商人の功績を物語る施設が今も多く残されています。
藍染の特徴は、染める度に色が濃くなることです。一度藍につけると、甕覗きという淡く薄い色に染まり、回数を増やすと浅葱、縹(はなだ)、藍、濃藍などに染まっていきます。勝色(かちいろ)という大変深い藍色は、鎌倉時代の武士に縁起色(=勝つ)として身につけられていました。
一度では濃い色に染められないために、染める、絞る、空気に触れるの工程を、何度も繰り返します。藍に浸した糸や布は、空気に触れ酸化することで鮮やかな青さを纏っていきます。
一般に、阿波正藍染は30回ほど水洗いした後に本来の色合いが出てくると言われていますが、水洗いのたびに調和のとれていない色が落とされ、深みのある色が醸し出されていくのです。
また、防虫効果があるとされる独特の香りも、四季を経るごとにその味わいを増し、着る人に安らぎを与えてくれます。 阿波正藍染は生活の中で磨かれていく染め物です。
昭和43年に「阿波正藍染法」として、県の無形文化財に指定されています。
のれん
絞り染め
扇子